蟻穴

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テルダ達の待遇に相乗りする策略は見事に成功し、龍希達は炎の国を目指す隊列に加わることができた。但しテルダ達は当初の配置通り中央に戻り、龍希達は最後尾の警護に加勢することが条件である。 このまま受け渡しのテーブルに着くことができれば、脱獄犯から搾り取ったであろう情報にそのまま在り付ける可能性も十分にあり、情報が集まったことを機に国軍が殺し屋組織の討伐に本腰を入れる流れになればそれに乗じて越光を救出する算段も立てられる。 そんな希望を見出しながら龍希達は歩みを進めたが、それは所詮皮算用であることを思い知らされた。 「どうしてこんな大人数で来るんだ」 組織が定めた配置に縛られないのはゲストの特権。炎の国の国境から暫く進んだ場所で隊列の動きが止まると、龍希達は直ぐに先頭に駆け付けリーダーが一人の兵と揉めているのを目にした。 その鎧のデザインからしてリスキニア達の一員であることは間違いない。そしてこの隊列に対する苦言はその人数についてであった。 「拘束済みとは言え、大量の凶悪犯を引き取るのですからこのくらいの戦力は必要です」 「転送の魔法で牢に直接送れば良いだろう」 (確かに……) 話を聞く限り、龍希は兵士側の主張に理があるように思えた。 「転送するとしても、それより前に暴動を起こされる可能性は否定できません。結局のところ、その脱獄犯共が一斉に蜂起した時に抑え込めるだけの備えがなければ引き取りには応じられないのです」 しかし国軍側も引き下がらない。本来であれば貴族を含めて民を護る立場である都合上、万が一の際に戦力が足らないので助けて欲しいと一般人に頼むことは許されないと主張した。 「逆に聞きますが、大人数だと何の不都合があるのですか?」 「……」 「万が一の時、貴方達が抑え込もうとしているのは『どちら側』ですか?」
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