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「万が一の時、抑え込もうとしているのはどちら側なのか……その言葉、そっくりそのまま御返しする」
(国軍がこれだけの戦力を揃えたのは脱獄犯の蜂起に対応するためだけじゃないってことか)
その仮定が正しいとすると、残った相手はお互いに一つずつしかない。リスキニア達が大勢の国軍を疎んでいる理由、そして国軍がその大群を率いている理由は今回の交渉の特記事項のためであった。
(そうか。国軍は警戒しているんだ。脱獄犯以上に、リスキニア達を)
引き取り役にテルダを名指し同然で指定したことは国軍も承知の上であり、龍希はそれがテルダに恩赦を稼がせようとするリスキニアの計らいだと考えていたが、それはリスキニアや姉弟仲に対するある程度の信頼があるからこその発想であると気が付いた。
そのフィルターを外した時、自ずと浮かび上がるもう一つの狙いはテルダ・リフォールそのものである。
「お互い腹の探り合いも疲れますね。ですがどうかご安心下さい。これでも人員は絞りに絞った方ですが、恐らく其方の戦力には遠く及ばない。争うことを不利益に考えてくれれば幸いと言う程度に、最小限まで」
「……」
「もう一度お伺いしますが、我々の備えが其方の不利益になるのですか?」
「……もう一度、上に相談する」
リスキニア達の兵士はもう一度国軍の隊列を舐めるように推し量り、その中にテルダがいることを確かめると見張り役を残してそれと共にこの場で暫く待つように言った。
テルダは今炎の国を統べているのはリスキニア・リフォールと同じ血を宿している特別な存在であり、もしも奪取して組織に加えることができれば士気を向上させる旗印にも成り得る。
炎の国にそんな人攫いのような真似をするつもりがないのであれば、国軍の軍勢は万が一の際に脱獄犯を抑え込む心強い戦力以外の何者でもあるまいと、隊のリーダーはリスキニア達に伝言させたのであった。
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