蟻穴

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「とにかく、座り込むのに相応な理由があるのは分かった。お前達の見張りを止めるわけにはいかないが、この間のようなことが起きないように警護も兼ねて御供しよう」 「ああ、そう言えば前に来た時は追手に襲われたんだっけか。それも国軍の奴に。その後は返り討ちにして……そっちに引き渡したな。色々と聞き出すからってことで任せたけど、結局のところ情報は得られたのかよ」 龍希はそう尋ねたが、見張りの男が共有の情報を喋ることができないことを思い出し「後で聞く」と一旦撤回した。 「ああ、今朝口を割った。もし吐けば国軍が脱獄犯共を引き渡す際にまとめて解放してやるぞと、飴を与えてやったからな」 「え、それだけで吐いちゃうものなのか?」 それを見返りと呼ぶには少々メリットが少ないように龍希は感じたが、長きに渡って尋問を受け続け精神的に疲弊した者にとっては飴として作用するだろうとブランクが補足した。 「確かに、この間山中の洞窟で待たされた時みたいなものか。とにかく暑くて辛くて、もしキンキンに冷えた水を差し出されたら小遣い全部はたいてでも手を伸ばしちゃうかもしれないな」 「嘘を吐けなくする魔法がある以上、小賢しい駆け引きはできぬ。捕らえられた場合口を割らないことが何よりも重要だと国軍にいる者なら知っている筈なのだがな」 「それで、聞き出した情報だが……」 「ちょ、ちょっと待ってくれよ。そんな重要な情報を此処で俺達に言っちゃって良いのか」 「舐めるな。確かに団結も情報管理も重要だが、それは言い付けを守るだけの傀儡になると言うことじゃない。押し黙るのも自分の意志、相手を認めて託すのも自分の意志だ。シノバズの情報を出すのは仲間の同意を得るべきだが、『奴』の情報はお前達に迷わず伝えるべきだと私が決めたんだ」
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