蟻穴

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「分かったよ。そこまでの決意があるなら堂々と聞こうじゃないか。俺達を襲ったあの男は、一体何者だったんだ?」 「お前達が去り際に暴いた通り、奴は国軍だった……そして、ギランハーツ・レーガンの命令でお前達を狙った」 「……そうか」 ブランクは目を閉じて、静かにそう返した。 今までに疑わしい要素は幾つも上がっておりギランハーツが自分と敵対していることも理解していたが、決定打はこれが初である。グルガンの存在が主であるとは言え、良好な関係を保っていたレーガン家が遂に一線を越えた。親代わりであったグルガンの家族から間接的な殺意を向けられたと言う事実はもう消すことができない。 「もう腹の探り合いをする段階でもなくなったようだ。奴は敵、そうハッキリと心得た上で動かねばならぬ」 「そして自分が差し向けた追手が帰って来なかった時点で、ギランハーツも俺達にそれがバレたことを察してるんだろうな」 「マキナとレーガンが争う日が来ようとは。祖父上が龍王を退き、マキナもそれを追うと決まっても尚、我を討たねば気が済まぬのか。相手が手を下さずとも消え去る存在だと知りながら、その背に向けて牙を剥かずにはいられぬほど憎悪を募らせていたのか……」 「噂には聞いていたが、お前は本当に珍しい考え方をする奴だな」 嘆き、悔やむような表情を浮かべるブランクに、見張り役の男は兵士としてではなく一人の貴族として問い掛けた。 「ギランハーツ・レーガンは、お前にとって親しい相手でも世話になった身内でもないんだろう」 「親しく世話になった者の身内ではあるが……そうだな。ギランハーツ本人とは大した交流はない」 「だったら、何故そんな悲しそうな表情をする?そんな相手から殺されそうになったら、怒るなり奮起するなりして抗うのが筋じゃないのか」 「勿論、悪意に抗うことも大切だ。しかし殺されるくらいなら殺してしまえと言う考え方や過ぎた闘争心は、世界を縮めやがて閉ざしてしまう」
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