蟻穴

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そして運命が呼応するかのように、テルダとジアが放った崩しの一発から傾き始めた戦局がついに佳境を迎えた。 「あたしを取り囲んで逃げられなくさせたことで一安心だから、後は同士討ちしないように遠巻きでチマチマやろう……そんな甘い考えを持ってくれて感謝するよ」 「挑発に乗るつもりはない。我々の目的は初めから貴様を始めとする主要メンバーの捕獲と本拠地の占領だ。無論他の下っ端共も捕まえられるだけ捕まえようとはしていたが、取り逃がすことも想定内。どうせ頭角を潰せば他は有象無象と化すだろう。残党狩りなど容易いことだ」 リーダーもただ動揺しているだけではなく、隊列の陣形を敷き直し殲滅から個人を確実に仕留める方針へとシフトさせていた。 中央に切り込んだリスキニアは隊列を乱し同胞を逃すのに成功した反面、その隊列に円形に囲まれて殆ど何もできない状況に追い込まれている。テルダやバレット達にも当然マークは付いており、この場に残ったメンバーは誰も逃がさないと言う意気込みが感じられた。 しかし、リスキニアは乱した陣形を立て直してくることを予め想定していた。それを行うためにある程度の時間を要し、その間に大きな隙を作らないように魔法による攻撃も派手なものは控えリスキニアの火炎を防ぐことに終始することも分かっていた。 「今までのあたしは猪突猛進で、突っ込んで暴れるだけだった。だけどあたしはある連中の戦いを見て、仲間のためにチームで力を合わせたり辛抱強くチャンスを待つ戦い方もあるってことを知ったんだ」 「それが何か。チームワークの大切さも、好機を待つ戦術も全て我々は最初から学んでいる。今更同じ土俵に立てただけで逆転できるとでも?」 「ああ、できるさ。それを今から見せてやる」
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