蟻穴

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火山の中に作られたリスキニア達の本拠地は貴族らしい過度な煌びやかさこそないものの、有志が自身の家で余っていた装飾品や家具などを持ち込み格式ある内装となっている。 リスキニアははしゃいでいると思われたくないがために今まで口には出していなかったが、この微妙に統一感のない内装はまるで秘密基地のようで、皆が力を合わせたと言う証を目の当たりにできるこの空間が好きだった。かつての我が家は没落と共にアッシュに奪われていたため、此処がその代わりであるとさえ思っていた。 そんな憩いの場も、国軍達に踏み荒らされ水浸しになり戦火に焼かれ、もはや見る影もなくなってしまった。弔うならば、せめて炎で。我が豪魔で。そんなリスキニアの人知れぬ思いが、この空間全体に地鳴りとなって伝わった。 「貴様、まさか」 「流石、察しは良いな。だがもう遅い!【噴火(アヴァル)】!!」 地に突き立てたリスキニアの拳が引き金となり、所々から火柱が噴出する。これはただの炎ではなく地底から引き寄せた溶岩であり、相性の良い属性でも容易く対処することはできない。 溶岩の温度は炎よりも低いが、粘度のある液体であるため長い時間皮膚に接触し続けることであらゆる身体組成を破壊する。これは熱に強い水属性の皮膚も例外ではなく、多くの国軍は初めて味わう火傷の苦痛に恐れ戦きただ逃げ回ることしかできなくなった。 「逃がさん。せめて、貴様だけでも……!」 この大混乱に紛れて、既にバレット達は他の貴族達が通った脱出経路を使い撤収を始めている。後はリスキニアの安全が確保できれば、この洞窟全体を噴火で崩壊させて通路の入り口を塞いでしまえば全員の脱出が完了する。リーダーはそれだけはさせまいと、全身に水の鎧を纏いリスキニアに突進した。
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