Hello World

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越光は見知らぬベッドの上で目を覚ました。それは状況に反して心身共に健全で、爽やかなものであった。 「流石に大きいねえ」 上体を起こしてまず感じたのはその大きさであった。人間の世界にも豪華で巨大なベッドはあるが、今自分が横たわっているベッドが擁しているのはそのような付加価値としての巨大さではない。必要最低限の機能しか備えていないにも関わらず、それが人間にとって余りにも飛び抜けたものに感じると言う、済む世界とスケールの違いを思い知らされるような衝撃をベッド一つから感じ取った。 「シーツも掛け布団も手触りが良い。人間が使っているものと大差はない。さて……」 寝起き特有の眩しさも和らぎ、視界が安定すると改めて周囲を見渡した。しかし、ベッドと同様にただ巨大であること以外何も目に付かないような殺風景が広がっているのみであった。 「せめて異世界のインテリアの一つでもあればいくらでも時間を潰せたものを」 唯一それに近い存在となるドアは案の定開かないと言うこと以外にコメントできるようなことはない。いよいよ関心のやり場を失った越光はふと自分の体も立派な観察対象であることを思い出し、徐に全身を弄った。特に異常はなく健康的な状態であったが、今に限っては非常に興味深い状態である。 越光は意識を失う前、有子を攫おうとするライズに対抗するためにルゴールドの羽から血液を取り込み龍化を行った。それがもたらした凶暴性に殆どの思考力を奪われている状態であったが、自身の体が内部から変化しまた戦闘の中で損傷したことも覚えている。しかし今の体に違和感はなく、傷跡も残っていない。自身の立場は未だに不明であるが、丁重な扱いを受けていることは確信できた。
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