Hello World

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越光は言われるがままに口を開いて生い立ちを語った。話しても無意味な部分は省き、本命の飛行機事故に差し掛かるとアッシュは素直に興味を示した。 「そうか。お前も羽桜龍希と関わってる時点で普通の人間じゃねえとは思っていたが、まさかそんな経験があったとはな。ドラゴンの手によって家族を失い、ドラゴンに選ばれて生き残ったか……」 アッシュのリアクションは同情しているようでもあり、ドラゴンの気まぐれで生き死にを分けられる人間の矮小さを嘲笑っているようでもあった。 「だがそれだけでは奴等と縁はできねえ筈だ。まだあるんだろう。運命の交わりってやつが」 「……例の墜落した飛行機には彼の父親が乗っていた。私の家族と同じく、その事故で亡くなったと聞いているよ」 「成る程。自分の父親を亡くした飛行機事故唯一の生き残りで、そいつがドラゴンに助けられたなんてことになってたら飛び付くしかないだろうな。奴については探っているが、ルーツは依然として不明なままだ。あれだけの潜在能力を持った奴が普通の人間な筈がない。いや、正確には普通の人間であって欲しくない。人間が全員あんな力を秘めてるなんてことになったらたまったもんじゃないからな」 (……) その言葉から、越光はアッシュにとって非常に重要な情報を自分が持っていることを知った。 龍希の父親は一族と呼ばれる人間の世界に根差して生きることを決めたドラゴンの集団の一員であり、人間と結ばれて儲けた子供が龍希である。本来であればドラゴンは飛行機事故から逃れることができるが、その一族は常人には理解し難い掟により、人間として死ぬ場面に直面した際はドラゴンの力で抗わずその死を受け入れることになっている。 アッシュのような論理的な思考の持ち主であれば、翼を持つドラゴンでありながらわざわざ逃れることのできる事故で死んだとは考えない。故に龍希の父親がドラゴンであることに気付いていなかった。
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