Hello World

15/29
前へ
/933ページ
次へ
「一応念のために確認しておいてやるが、今お前は自由に龍化することはできないってことで良いんだよな」 「……そのようだね」 越光も念のために心の中で強く力を望んでみるが沸き上がる力や鼓動の高鳴りを感じることはできなかった。幸か不幸か、今の自分はただの人間であると言う感覚は越光の中に強く残っていた。 「俺が最も興味を持っているのは能力の内容じゃない。お前の中に眠る力がルゴールド・グランエルのものであるかどうかなんてハッキリ言って誤差のレベルだ。俺が知りたいのはその体内に眠る力を制御する方法。それは指輪か、意志の力か?指輪を持たないお前が新たな答えを示すことを期待しているぜ」 アッシュが透明な壁に手を這わせるとその部分から蒼白い光の線が放射された。それらは壁の中を高速で動き回りながらいくつかの図形を浮かび上がらせ、操作パネルの様相を作り出した。その後再びアッシュの指が図形に触れると同じように光の線が放たれ、時折直角に曲がりながら縦横無尽に壁の中の回路を駆け巡る。壁が上部では半球状になっていることも相まって、越光の目にはそれらがまるで流星群のように映った。 しかしそれはアッシュからの贐(はなむけ)であったようで、越光が心穏やかな時を過ごせるのはこの瞬間が最後である。 「俺が思うに人間の力とは心の力、即ち精神エネルギーだ。そして魔法の根幹となる魔力はそれを扱う者の精神状況によって質も量も大きく左右される。故に人間の並外れた精神力とドラゴンの血と反応した時、大きな爆発を引き起こす。これが俺の立てた仮説だ」 「だから私がその精神エネルギーとやらを解放できるように、荒療治を行うと……?」 「まあそんなところだ。お察しの通り、お前は今からその檻の中で熾烈で理不尽な暴力を受けることになる。俺に協力すると言うのなら、人間の可能性を見せてみろ」 そして見せるのであれば、残さず全て食らってやろうとアッシュはせせら笑った。
/933ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加