集約

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「これは、緊急事態ってことか?」 人類が観測した最も大きな音は火山の噴火であったとされており、4700km先まで聞こえたと言う記録が残っている。 唸るような地鳴りとその直後に聞こえてきた爆発音は先客の用事が済むまで国境の周辺で待機していた龍希達とその見張りをしていた貴族の一人に大きな衝撃を与えた。 「ああ、これは本拠地の……!」 拠地は火山の中腹に作られているため、噴火が起これば大きな被害が出る。しかし魔法を用いれば火山内部のマグマをコントロールすることが可能であるため、自然現象による噴火は制御する意図がある限り発生しない。即ち今空気を震わせているのは意志の籠った武器としての噴火であり、尚且つ本部の壊滅も厭わない全力の抵抗を決行しなければならないほど深刻な状況と言うことである。 当然リスキニア達の一員である貴族は状況を確かめ加勢するために飛び立ちたかったが、現在は龍希とブランクの見張りを任命されている。緊急事態に対する対応をするか、このような状況だからこそ乱れずに任務を遂行するか。そんな迷いが頭の中を過ったが、余計なことを考えている時間はないとその龍希に叱咤を受けた。 「何やってるんだ、早くリスキニア達のところに行くぞ!」 「わ、分かった」 空に上がって見晴らしが良くなり、悪い想像通り本拠地の方から黒煙が噴き上がっていることが確認できた。 「そう言えば、名前聞いてなかったな。教えてくれよ」 「余計なやり取りをしてる場合じゃない。今は口よりも翼を動かす時だ」 「余計じゃない。急ぐのは勿論だけど、目的地に着いたらそれで終わりじゃないんだ。着いた先にある危機を乗り越えるために俺達は必ず手を取り合うことになる。その時名前も知らない相手と、たった一言でも知り合う言葉を交わした相手とじゃ、結果が変わって来るんだよ」 「……コールだ。噂には聞いていたが、本当に変わり者だなお前は」
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