集約

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龍希達とコールはそれぞれ左右と後方を分担して警戒しながら本拠地のある火山へと向かった。幸いにも山腹に設けられた広い入口の近くに降り立つまで敵との接触はなく、三人は翼を畳んで身を屈める。 「コール。あそこから煙が出てるのはおかしいよな」 「ああ。本拠地の中にマグマの溜まった地下空間と繋がっている部分はない。通常では白色の噴煙すら出る筈がない」 しかし入口から溢れ出ているのは火山灰が多く混じった黒色の煙であり、内部で豪魔を使用しなければならない程の激しい戦闘が起こったことを改めて確証した。 「だとしたらやっぱり、何かとんでもないことが起こったんだよな」 三人が真っ先に思い浮かべたのはリスキニア達が国軍に引き渡す予定だった脱獄犯が何らかの切っ掛けで自由を取り戻して反乱を起こしたと言う事態であったが、それだけでこの状況に繋がるとは考えにくかった。 「そもそも、脱獄犯には魔力を封じる枷が着いている筈だ。多少暴れたところでどうにもなるまい。況してや国軍まで同席しているのだぞ」 「お、噂をすれば……」 本拠地の入り口から顔を出したのは、龍希とブランクを言葉巧みに隊列から追い出した国軍のリーダーであった。今立っている活火山の斜面は多少の起伏こそあるが植物は自生しておらず身を隠せるような物陰もない。どの道このまま様子を伺い続けることはできないため、三人は近付いて現在の状況を伺うことにした。 「これは一体どう状況だ。何があった?」 龍希とブランクは極力出しゃばらずこの国で起こっていることの対応はこの国の者に任せる方針を執っているため、リーダーと接触して情報を伺う役はコールが任されることになった。 「いえ、ご心配には及びません」 リーダーは、穏やかな笑顔でそう答えた。
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