集約

5/22
前へ
/932ページ
次へ
テルダやジアを従え、自分達とも違和感を感じさせずにやり取りを続けた。そんな立場の相手に成り済ますことは通常不可能だが、それを唯一可能にできる人物を龍希とブランクは知っていた。 「部下達は残党狩りに向かわせてるし、此処にいるのは僕達だけだ。お望み通り答え合わせと行こうじゃないか」 既に龍希達はブランクの展開した光の翼の中に身を置いており、この状態ではブランクが許可しない全ての物体は内部に干渉できず擦り抜ける。今更演技を続けても油断は誘えないと判断したライズは、特殊な樹脂を固めて作られたマスクを脱ぎ捨て正体を露わにした。 ライズは周囲の認識を改変しなんら取り繕う必要もなく他者に変身できる魔法を敢えて使わず、樹脂のマスクと声帯に植物の種を埋め込むことで声色を変化させる特技だけで『変装』を行うことに拘っている。その変装は魔法による変身と比べて遥かに原始的だが、それ故に魔法の対策を打っている上流階級の者ほど盲点を突かれてしまう。寧ろこのような重大極まりない場面こそライズの悪戯は本領を発揮する。 龍希とブランクはそのあっけらかんとした喋り方や自分達に明確な危害を加えてこなかったことを理由に、今までライズの背後で起こっていることに気を取られ本人への敵視を怠っていたことを反省した。 「地下街で脱獄犯共に売春をさせて逃亡先を斡旋していたかと思えば、今度は国軍の要人に化けて国を潰すだと?貴様は悪ふざけの度が過ぎている。今この場で罪を清算してもらうぞ」 「あらまあ。とうとう僕もブラックリスト入りになちゃったみたいだね。これまでみたいに、何だかんだで戦場で相対してもこうしておしゃべりできる仲でいたかったのになあ」 「黙れ」 それに対する返答だと言わんばかりに、プラズマの剣先がライズの口に飛んで来た。
/932ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加