集約

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「貴様を楽しませるためにこの翼を広げているわけではない。興醒めするのも大いに結構。しかし殺す気がないのは此方も同じ。不本意ながら貴様の願いは一つ叶うと言うことになる」 「そう言えばあのエツコって女は君達の仲間だったね。僕を生け捕りにしてアジトの場所を聞き出そうって魂胆かな?」 龍希とブランクは攫われた越光を助け出すためにこの世界に来ており、ライズはその居場所を知る手掛かりであるどころか誘拐の実行犯である。不意を突かれたものの、この相対は二人にとって願ってもない状況であった。 「そう言えば僕が元々攫おうとしたユウコとノリで攫っちゃったエツコって響きが似てるよね。人間の世界にも、良く名前に使われるフレーズみたいなものがあるのかな?因みに僕のところは……おっと!」 ライズは体を大きく仰け反らせて龍希の光の剣を間一髪のところで躱した。 龍希の剣は質量が存在せず無限の遠方まで伸ばすことが可能であり、僅かに手首を返す程度の動きで剣先を大きく振るうことができる。通常であればその動作を見てから回避することは不可能であるが、ライズは龍希が斬ると言う意志を込めて全身に力を溜める段階からマークしておくことでそれを覆した。 「その剣も大概インチキだよね。絶対に味方は切らない、どんな盾でも防げない。手加減するも殺すも自由自在。そのくせ大したリスクもないと来たもんだ。ズルだよズル」 (奴の言葉に耳を貸す必要はない。揺さぶられるだけ損だ。しかしそれにしたって不気味だな。こっちの攻撃を避けるだけで、反撃する気配もない。ブランクの翼で無駄だと分かってるから反撃しないにしたって、それならさっさと逃げてる筈なのに……) ライズの狙いは読めなかったが、もし何らかの作戦があるとすれば時間を稼がれるのは得策ではない。龍希は大きく勝負を動かす決意をした。
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