集約

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光の翼による絶対防御で築いた優位を覆す猶予は与えない。龍希はブランクの背中に回り込み、ブランクは龍希の狙いを察して四枚の翼と三対目の代わりであるかのように両腕を大きく広げた。 (アイツは俺の僅かな動きから剣の軌道を読んで回避した。ならばその読みを使えないようにするまでだ!) 龍希の策はブランクの体で自分を隠し、ライズが剣の軌道を読めないようにすると言うもの。単純なアイデアだが、龍希が斬ると望んだもの以外は全て透過すると言う光の剣の特性を最大限に活かした戦術である。 ブランクが口でライズが同じ場所にまだ立っていることを伝え、龍希はブランクの背中越しに見えざる相手を狙う。龍希から直接ライズを見ることができなくなるが、光の翼の内部にいるためどんな不意打ちも受け付けない。 「最強の剣、最強の盾。大層な言葉を大事に抱えて、そんなに縮こまるようになっちゃって……哀れだねえ」 攻守共に盤石な状態から堅実に勝利を掴む。龍希が剣を振り翳した瞬間に聞いたのは、そんな二人の姿勢を嘲笑うライズの言葉とコールの叫びであった。 「マズい……二人とも、逃げっ……!?」 その言葉は背後から聞こえた。コールが後ろから迫り来る何かを見てそう言っていたのだとしても、ブランクがそれを見て認識していない以上光の翼の内部には干渉できないため三人は安全である。 コールがまだ光の翼の性質を理解しきれてはいないために発された言葉に違いない。そんな意識が龍希とブランクで共有され、どちらも後ろを振り向こうとしなかった。先ずはライズを仕留めることに全力を尽くし、それが片付いた後で背後の危機に対処すれば良い。そう考えていた。 しかし、その慢心こそライズが哀れみを抱く縮こまった思考そのものであった。
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