集約

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糸で操られたコールによるものであったため、龍希とブランクを貫いた攻撃の精度は低く急所からは外れていた。しかし二人は体以上に心に大きな衝撃を受けたことで未だに立ち上がれずにいた。 ブランクの光の翼は言わば迎え入れた者を別世界に隔離して避難させる魔法であり、攻撃側との力比べを行わない。他の防御手段とは文字通り次元の違う存在であり、比較することすら不可能である。二人はそれに絶対の信頼を置いていたが、人物に関する受け入れが一括であることと後からその一部になったものも纏めて受け入れてしまうと言う弱点をライズに突かれて破られた。 テレビの中にある拳銃に危害を加えられるかもしれないと警戒する人間はいない。先ほど起こったことは正にそのテレビから飛び出した銃弾に撃ち抜かれたようなものであり、二人に大きな心理的ダメージを与えた。そしてライズは現実の傷よりも、絶対が打ち破られた失望と恐怖に愉悦を覚えた。 「いやあ、実に良いものを見ることができたよ。安全地帯で気が緩み切ったところから生命の危機に叩き落された時のあの表情!この世界には持ち運びやすいカメラがないことが悔やまれるねえ。地下マーケットが潰される前に人間の世界の物を買っておけば良かったよ」 「図に、乗るな……!」 ブランクは出血した腹部を抑えながら立ち上がり、精神的な動揺で解除された光の翼を再び発現させた。コールが手放した刀は翼に弾かれ対抗心を示すかのようにライズの足元に突き刺さった。 「まあまあ、そう怖い顔しないで。僕は別にこの場で君達を殺すつもりはないよ。そもそもやろうと思ったところで無理だしね。今のはあくまで一矢報いたってやつさ」 ライズは引き抜いた刀の血を丁寧に拭い、元の鞘に納めた。
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