集約

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「もう少し耐えてくれ。今応急手当てをする」 「我は後で良い。それよりも龍希を……」 「分かった。その間に傷口が見えるように脱いでおいてくれ」 コールは治癒に関する魔法を使えないが、警備を任されるだけあって戦場での経験はそれなりにありこのような場面での対応策も心得ている。最も手早く行える手当てとして爪先を高温に熱して龍希の傷口に押し当てた。 「あづっ、うぐぅ!!!!」 多少の痛みも覚悟していた龍希であったが、熱で傷口を溶かし固めて塞ぐと言う荒療治に思わず唸り声を上げた。 「き、キツイなこれ……」 「次は反対側だ。まあそれだけ声が出せるなら致命傷と言うわけではなさそうだな」 「コールがギリギリまで粘ってくれたお陰だよ」 それはコールの右手首に浮かび上がる打撲痕が証明している。 龍希達が光の翼を過信してコールの呼び声に耳を傾けなかった中で、コール自身は糸の支配に限界まで抗っていた。縛られた部位に力を込めても無駄だと言うことを悟ると、自由を失っていなかった反対側の手で龍希達を刺そうとする手を殴り付けた。 これにより攻撃を中断させることはできなかったが、剣の軌道を曲げて内臓などの急所を大きく外すことには成功していた。これにより手前側にいた龍希も傷口さえ塞げば最低限の行動はできるまでに回復することができた。 「これで一先ず失血死の心配はなさそうだ。ブランクの分も終わったら直ぐにライズを追い掛けよう」 「いや、塞いだのはあくまで体表の穴に過ぎない。それも強引にだ。内部の傷や溜まった血がいつ悪さをするか分からんぞ。治療に専念するべきだ」 あくまで越光の救出を続行しようとする龍希と、龍希自身がまだ助かっていないと主張するブランクの間で意見が二つに割れた。
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