集約

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ドラゴンは身体が強靭でそれは内外を問わない。治癒の魔法はドラゴン同士が争う戦場で価値を見出され発展したものであり、それは突発的に生じた外傷を塞ぐためのものでしかない。 「もし体の内側までケアするとなったら、魔法を使わずにってことだよな。そんなのどれだけ時間が掛かるか分かったものじゃないぞ」 「ああ。時間を掛けるべきだと言っている。或いは一度戻って、クレインの診断を受けてからでも」 「勘弁してくれよ。今は一刻を争う時なんだ。せめて異変が出てからでいいだろう。その時は、強がり言わないでちゃんと報告するって約束するから」 「うむ……」 龍希は目に見えて活力を取り戻している。ライズが離脱してからまだ長い時間は経過しておらず、今なら追跡できる可能性も低くない。 「そう言えば、お前達の事情を聞いてなかったな。本来は我々に何を頼むつもりだったんだ。奴と何か因縁があるのか?」 「俺達の仲間が一人、アイツに攫われたんだ。恐らくシノバズのアジトみたいな場所に囚われてる。無事ならな……」 「成る程。それは確かに深刻だ」 「しかしその仲間一人の命と龍希の命、価値の差はない。片方のためにもう片方を犠牲にしてはどうにもならん」 「だから、俺は犠牲になんてなるつもりはないって!どうしたんだブランク、いつになく弱気じゃないか」 「当たり前だろう。刺されたのだぞ。最良の方法で護ったと思っていた、最愛の相手が。自分の真後ろで」 コールの抵抗が実らなければ、龍希を失っていたばかりか指輪の制約により自分も命を落としていた。炎の貴族の協力で越光の居場所さえ分かれば、後は自分と龍希の能力でどうにでもなると言う思い上がりを叩き潰された今、ブランクはこのまま突き進むと言う選択ができない状況になっていた。
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