集約

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「一時的な避難ではなく、この組織に属すると。国軍と袂を分かつと言う覚悟の下でそこにいると言うことか」 「ああ。正真正銘の崖っぷちだ。今となっては恩赦も手柄もあったもんじゃねえな」 そう言ってテルダは自嘲気味に笑っているが、ジアは身の程を弁えて神妙な面持ちであった。 「誠心誠意罪滅ぼしに務めようと思ったら国軍がそれに相応しくない場所になっちまった」 「バレットの手前我も余りこのようなことは言いたくないが、国軍を敵に回してもおかしくない行いはしていたと思うがな」 「その部分に関しては俺も国軍側に居た時から肩を持つ気はなかった。だが交渉の申し入れをダシにして一網打尽にしようとするのは俺の信じる正義に反する。況してやそれがライズの差し金なら猶更救いのない話だ」 「自分は地下街の襲撃を扇動するなどと言う真似をしておいて、国軍には一点の曇りもない存在でいて欲しかったとは大した口ぶりだ」 「ぐっ……確かに、身の程知らずな言い草だったかな」 「それはそれだが、我が質したいのはそこではない。猶更、とするのは些か短絡的ではないかと言うことだ」 テルダは殆ど成り行きも同然で進んでしまった現状を正当化すべく、もはや他に道は無しと強調している。しかし今回の事変がライズ個人の陰謀によるものであれば、寧ろ救いの道にも成り得るとブランクはそんなテルダを窘めた。 「国軍としては情けない話であるが、現状が奴一人にコントロールされた結果であるのならその逆もできる筈だ。奴の正体を暴いて国軍に再度判断をさせれば、炎の貴族全員を罪人扱いし見境なしに捕らえるなどと言う横暴は取り消せる可能性が高い」 「いや、いくらライズでも俺みたいな個人はともかく組織全体を手玉に取るなんて真似が一人でやれるとは思えない。国軍の内部にライズ以外の協力者がいて、上層部も取り込まれてると俺は踏んでいるぜ。今更何をやったって、国軍のジャッジは覆せない」 「まるで、そうあって欲しいかのようだな」 「……さあな」
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