集約

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それでもテルダの決断は変わらなかった。 「その程度のチャンスなら喜んで切り捨てるぜ。此処に留まれることに比べたら、単なる古巣に帰れるかどうかなんて大した契機でもない」 運命に振り回されることに辟易し意固地になっているのか、確固たる決意があるのか、それは第三者には判別のしようがない。龍希はテルダの説得を思い止まることにしたが、最後にどうしても確認しておきたいことを問い掛けた。 「それは、ジアも同じ気持ちで良いんだな。無理矢理付き合わせたりしてないんだよな」 「・・・・・・!」 テルダは咄嗟に言い返しそうになるのを一度堪え、大きく息を吸って胸を膨らませた。 龍希の質問は的を射ている。かつてライズに唆されてガルドの暗殺に踏み切った際、ジアは反対し自分を窘めようとしてくれていた。それを聞き入れなかったばかりか道連れにする形で暗殺に付き合わせた挙句このような身分にしてしまった罪悪感は今でもテルダの胸に突き刺さっている。 そして現在、何の因果か再びライズの暗躍でテルダは国軍を抜け独善的な正義に身を投げようとしている。それならば当然、再びジアをそこに引き摺り込んだのではないかと疑われることも覚悟しなくてはならない。 況してや、これから二人が身を置こうとしているのは炎の貴族達で構成された組織であり、シノバズと決着を付けた暁には龍希が用意すると約束した新天地に旅立つことが決まっている。テルダが属する分には何の齟齬もないが、水属性のジアがそこに骨を埋めることが容易であるとは思えない。 「無用な心配だ。私は、自分の意志でテルダに付いて行くと決めた。これがその証だ」 ジアは腕に嵌められたリングを堂々と龍希に見せ付けた。
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