集約

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龍希とブランクは一度、ジアが差し出した腕輪についての説明をエルゼから受けている。 それは囚人が特別な事情の下で外に出た証であり、首に施されている紋章の対となるものである。紋章は魔力の放出を封じるためテルダやジアを始めとする罪人達は基本的に魔法を使用することができない。与えられた使命を遂行する場合に限りその封印を解除することが許されているが、腕輪はその鍵の役割を持っている。 自身の管理を務めるに相応しい相手に腕輪を譲渡し、その相手に許可を得ることで紋章の効力が一時的に緩和される。全開ではないものの、このプロセスを経て罪人はようやく魔力を取り戻すことができるがその代償は軽くない。腕輪の譲渡は指輪と同等の契約が成立し主に対しては絶対的な服従となるため、魔法を使うためだけに腕輪を他人に託すことはできないと言う心理的なセーフティロックが掛かっている。 「その腕輪が、どうかしたのか」 ルゴールドはそれを楠木に託し、自らの意志と誓いを示した。しかしジアの腕には確りとリングが残っており、一見しただけでは龍希達には何を示しているのかが理解できなかった。 これは自分も同調しなければ説明が付かない。そう観念したテルダは、照れ臭さを堪えて自らもジアと同じポーズで腕輪を見せた。 「おいおいまさか……と言うか、それって『アリ』なのか?」 龍希は二人の言わんとすることを理解し、我が身を棚に上げて驚愕する。 「できるんだからアリだろうよ。あの龍王サマはロマンチストだから、案外意図された抜け道だったりするんじゃねえか」 「……有り得る」 ブランクも追って二人が腕輪を交換したことに気が付き、確かにテルダと道を違えることは不可能だと認めた。
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