集約

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「しかし、我々以外にも神具の取り交わしを行った者が現れるとは感慨深いものだ」 「確かにそうだな。俺達以外にはやってる人を見たことがなかった。何か、こう……自分のことでもないのに胸が躍る感じだ」 かつてこの世界で婚約を取り交わす際には指輪を交換することが仕来りであったが、契約に伴う不自由や一蓮托生のリスクなどの理由で徐々に敬遠され現在では廃れた風習となっている。龍希とブランクですら始まりは事故と偶然が重なってのことに過ぎず、最初から自分達の意志で儀を行ったテルダとジアに対して二人は畏敬の念を抱いた。 「いや……後悔こそしていないが、ジアはともかく俺はあの場から逃れるために、魔法を使って戦うためにお互いの腕輪を交換したんだ。持て囃されるほど立派なことじゃない」 「切っ掛けなど些細な問題に過ぎぬ。契約が二人にとって相応しいものであったのかどうかは、その後の立ち振る舞いで全て決まる」 「まあ、そうだよな。お前ならそう言うよな……」 バレットはその言葉が持つ凄まじい説得力に苦笑していたが、ブランクはそれに不服であった。 「恰も他人事のような言い草だな」 「そ、そんなことねえって」 「ああ、そう言えばバレットがブランクの指輪を叩き落としたおかげでそれを拾った俺と出会ったのか。つまり俺達のキューピッドってことになるのか?」 「悍ましいな」 「やかましい。俺だって縁結びなんてしてやるつもりはなかったぜ。そもそも俺はあの時点じゃ……いや、何でもねえ」 「何でもなくないだろ。指輪落としたってどう言うことだ。指から引き抜いて投げ捨てたのか?」 「誰がそんな酷いことするか!」 「だとしたら一体どう言う状況だったんだ。気になるじゃないか」 「リスキニア、お前まで……」 姉弟から立て続けに問い質されバレットはたじろいた。
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