謀略の発芽

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できるだけ目立つことなく城内に入りたいところであったが、テルダとジアは既に国軍を離脱しているため兵舎から忍び込むいつもの手法は使えない。止むを得ず正面から入ろうとしたが、目立つかどうか以前の問題に突き当たった。 「現在関係者以外立ち入り禁止です。お引き取り下さい」 二人に待っていたのは想定外の門前払いであった。改めて見回すと、普段は目立たない空中の見張りも相当な数が置かれている。 ブランクは極力切るまいとしていた龍王の親族であると言うカードを出したが効果はなく、相当重要度の高い命令であることが伺えた。勧告通り引き下がると言う選択肢はないが、恐らく国軍の一員であろうこの門番と揉め事を起こすわけにもいかない。二人は焦る気持ちを押し殺し、慎重に糸口を探すことにした。 「随分と警備の方が賑やかになっているようだが、何か城内で事件でもあったのか」 「いえ、そのようなことはありません」 「では城内以外であったと言うことだな。炎の国の件か?」 「……」 門番は口を噤んだが、これは実質肯定と変わらない。土の国を起点に起こった獣人達の大規模蜂起に加え、炎の国の貴族達も反乱者にリストアップされたことで王都は極度の緊張状態に陥っている。 何かと衝突の絶えない四つの国を王都がバランスを取りながら統治すると言うスタイルはその半数が国としての機能を失ったことで既に崩壊しつつある。そのためあらゆる交流を絶ち、今後の方針が定まるまで何かしらの旗を持っている者は全て排除すると言う厳戒態勢に移行したのだと言うことは想像に難しくない。 (だとすると、祖父上の身内であることを強調したことは間違いであったか。恥を忍んで不遜な真似をしたと言うのに、報われぬ話だな) ブランクは内心舌打ちをしつつ、王都は反乱に怯えていると言う部分から囲いを崩すことにした。
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