謀略の発芽

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「我々はその炎の国に関する情報を伝えるために此処に来た。扱い方次第では、現状の打開にも繋がる重要なものだ」 討伐も止む無しと言う流れはライズが歪めて作ったものであり、それは炎の国も認識している。国軍が姿勢を持ち直せば対立を凍結させ王都を脅かす要因を一つ減らすことができるため、本懐ではないと言うだけでブランクの言葉に偽りはない。 門番はその場凌ぎの出任せで発することのできない気迫を感じ、考え込む仕草を見せた。 「それはどのような情報ですか」 「とてもこの場では口にする訳にはいかぬ。上の命ならお前の独断で通すことはできなかろうが、逆に上の許しが出ればお前の独断で道を塞ぎ続けることもない筈だ。中に入りたいと言う要望を上に持って行ってはくれないだろうか」 「……」 現状からしてこれ以上の妥協はない。先ほどと同様にその意志も伝わっていると言う手応えを感じる。あともう一押しか、と思われたところで門番の背後からその仲間が騒ぎを聞き付けて現れた。僅かに異なる鎧の装飾や風貌から推測される年功から、その男は他の兵よりも高い地位にあることが伺える。 そしてその男は二人と話していた門番に暫くの間耳打ちをすると、状況は瞬く間に変化した。 「お通り下さい」 「うむ」 「どうも」 ブランクも龍希もそれ以上の返事はしなかったが、門番の横を通過する際に絡み付くような視線を肌に感じた。 ライズの正体さえ暴けば全てが解決し理想的な展開を迎える。そんな甘い見込みを咎めるかのように背筋に食い込む不気味さに対抗すべく、二人は大袈裟に息を吸って胸を張り、半ば無理矢理姿勢を起こして先を見据えた。
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