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ギランハーツがマキナ家に恨みを持っていることは十分に承知している。しかし、それでも治安に携わる一人として使命は果たすだろうと言う最低限の信用はブランクの中にあった。此方を挑発するような態度も、今ににやけ面で顔を合わせている相手が国軍の幹部ではなく殺し屋組織の手先だと分かれば撤回して正しい判断を下すだろうと見込まれていた。
「一刻を争う事態だ、単刀直入に質問する。貴様は先ほどまで炎の国に出向いていたか?」
「言うほど率直な質問ではないように思えますが、ええ。このウェイク・オラングは確かに隊を率いて炎の国に向かい、任務を遂行しました。その際に貴方とも顔を合わせていますよ」
促されるままに周囲を見れば、今結晶石の周辺を固めている兵の大半はテルダを護衛する隊列に参加していた者と同一である。そしてギランハーツのみならず、ウェイクまでもが薄ら笑いを浮かべ試すような態度を取っている。
敢えて本物のウェイクと接触させて攪乱すると言う策略も十分に考えられるため、ブランクはまず目の前にいる相手がライズなのか確認しようとしていたが、これで一気に心象は偽りに傾いた。
「その後、もう一度お会いしましたね」
「・・・・・・!」
そう言いながら、腰に差した刀をこれ見よがしに半分ほど鞘から抜いた様を見て二人の心は決まった。
「そうか。意図は知らぬが、誤魔化すつもりはないと言うことだな」
「はて。何のことだか分かりかねます」
「ほざくな」
確証を得たブランクはライズのマスクを剥ぎ取るべく手を伸ばしたが、その手首を下から鋭く掴まれた。
「一応忠告しておきますが、貴方が先ほど仰ったように今は事態が事態です。どんな理由があろうと、この状況で私に手を掛けるのであれば相応の覚悟があると言うことで宜しいでしょうか」
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