謀略の発芽

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ブランクと龍希は半ば混乱しながらも様々なケースを考慮したが、ライズがウェイクに成り済ましている方法を見破ることはどうしてもできなかった。それと同時に、想像したくなかったもう一つの可能性が途端に色濃く浮かび上がった。 「本当に残念です。やはり御二人は、『向こう側』と通じていらっしゃるようで」 「何だと……?」 「特にブランクさん。炎の国を根城にしている逆賊、その頭に位置する人物は貴方のご友人だ。バレット、でしたっけ。それと接触することが目的であることは私の他多くの者が認識しています」 心なしか、二人を取り囲む兵達の輪が一回りほど小さくなった。 「貴様、バレット達のみならず我々までもを罪人に貶めるつもりか」 「そこまで言うのならこの場でハッキリと申し上げて頂きましょうか。貴方はどちらの味方ですか?この乱世の真っただ中、両手に花は些か贅沢かと」 「そんな下らない誘導尋問には乗らん。我々はこの馬鹿げた誤解を解きに来たのだ。仲を取り持って何が悪い」 「馬鹿げた誤解をしたのは貴方達でしょう。この私をよりにもよって殺し屋呼ばわりとは」 「……!」 その部分を突かれると反論のしようがない。結局のところ、ブランクの主張はウェイクがライズの変装であることを証明できなければそこに何を付け足しても無駄となる。 もし、それすら折り込んだ謀略であったとしたら。 炎の国への征伐を決めた人物が、ウェイクに成り済ましたライズではなくウェイク本人であったとしたら。ライズは単に、一時的にウェイクの変装をしてブランク達の前に姿を現して悪戯をしただけだったとしたら。 (いや、しかし、そんな計画が立てられる筈がない。我々がテルダ達の隊列に加わったこと自体が全くの偶然なのだ。向こうにそれが読めたとは思えん。だ、だとしたら一体どう言う状況なのだ、今は……!?)
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