謀略の発芽

11/29
前へ
/932ページ
次へ
そんな男の言葉に耳を貸すな。 この場で声を上げられたのなら、どれほど楽だったか。しかしそんなことをしても負け犬の遠吠えにしかならないことをブランクは痛感していた。 自分はグルガンを失望させた。罪を償おうとするルゴールドの肩を持ち、楠木との再会を手助けした。それを後ろめたく思い、グルガンに黙っていたことも知られてしまった。 ボルトガードを皆殺しにしたルゴールドにさえ手を貸したのであれば、例えバレットが国軍の討伐対象になったとしてもそのバレットに手を貸すことも平然と行う。グルガンはブランクをそう評価しており、それに対して反論はできない状況であった。 「だが、それでも……」 トリックの詳細は分からないが、ここまで来ればもはや疑いの余地はない。ギランハーツはライズと手を組んでいる。バレットや自分を陥れるために、国を護る立場にありながら殺し屋と結託し、親代わりであったグルガンの肩を抱いてほくそ笑んでいる。 許せない。 「見境がないのは貴様だ、恥を知れッ!!!」 牙を曝け出し、唾液を飛ばす。品性を取り繕う気のない怒号が周囲の空気を震わせる。ギランハーツは愚か、今のブランクの表情は龍希やグルガンでさえも見たことがないものであった。 「は、はは……遂に正体を見せたな」 ブランクが挑発に乗って怒りを露わにしたことはギランハーツの狙い通りであったが、想像以上の激昂がもたらした衝撃に笑みが引き攣り余裕の態度を崩し掛けた。 しかし今は覆しようのない絶対優位であると自分に言い聞かせ、同じく気圧され掛かっていた兵士達に激を飛ばした。 「さあ、あの反逆者共を捕らえろ!」 「ブランク……」 「分かっている!」 既に覚悟は決まっている。ブランクは光の翼を展開し、龍希を保護すると同時にあらゆる危害から干渉されることを防いだ。 しかし、本当の闘いはこれからであった。
/932ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加