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光の翼は龍希の光の剣と同じく伸縮自在であるが、その源泉は光によって上下を縫い合わされたブランク自身の翼、つまりは自らの背となる。ブランクは肘先を後ろに逸らせ、その湧き上がるような光を腕に纏わせた。
「試そうではないか。貴様が曲がりなりにも人の上に立つ資格がある者なのか」
国軍の上官として。そしてグルガンの兄として。ブランクはそう言いながら纏った光をギランハーツに向けて放った。
「なっ……!?」
光の翼を防御の手段だと考えていたギランハーツは突然の行動に体が動かず、身構える間もなく翼の中に飲み込まれた。そして側にグルガンは逆に翼に弾かれ、否応なしに引き離される。
「先ほど我が言ったことは覚えているな。この翼は許可したもの以外全てを拒絶すると」
その言葉の通りグルガンは弾かれたが、ギランハーツはそうなっていない。それどころか翼の内側に取り入れられ、ブランクと同じ空間に立っている。この状況が示している事実はたった一つしかない。
「許可した……我は、貴様がこの聖域の中に留まることを赦した。この意味は分かるだろう」
「試すとは、こう言うことか」
「そうだ。敢えて与えた。貴様が直々に我を捕えるチャンスをな」
ギランハーツは挑発に奥歯を噛み締めながらも、翼の外側に出ることができるか確かめようと手を伸ばしブランクに咎められた。
「先に忠告しておくが、我が貴様のような汚物を中に入れるのは一度きりだ。一度外に出ればこの大捕物の手柄を独り占めすることは不可能になる」
「下らねえ。俺の立場を忘れたか。今更手柄なんて不要だ」
「それはどうであろうな」
告発した本人の安全のために口には出さないが、ギランハーツがルゴールドを脅してでも手柄を稼ごうとしていたことをブランクは知っている。その見透かしたような嘲笑は、確実にギランハーツの精神を抉った。
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