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グルガンから強さの意義を聞いたブランクの表情は晴れやかなものではなかったが、迷いはかなり薄れていた。
『抑止力としての力……と言うわけか』
『その通りです。ブランク様が望まないのであれば、この力を誰かに振り翳す必要などありません。歯向かう輩が現れた時は我々ボルトガードがお護り致します』
『無論心強い話ではあるのだが、そのボルトガードは抑止力にならぬのか?グルガンやアルフを始めとする強兵が幾人もボルトガードに属している。我一人がどれだけ名を轟かせようと、誤差のようなものだと思うのだが』
『滅相もない。我々こそ誤差のようなものです。ブランク様が強き者であることこそ最も重要なのです。それは龍王様も、ガルド様も例外ではありません』
『軽んじられたのなら、容赦なく反乱を起こされると言うことか』
『それだけではありません』
実は、これが貴方にとって最も重要なのかもしれないと前置きをした上で、グルガンはブランクに語り掛けた。
『ブランク様はお優しい。私がこれまでにみたことがない程に。故にお気づきになられていないと思いますが、我々ドラゴンと言う生き物は元来弱者を許せないものなのです』
『……それは考えたこともなかった』
『強者には敬意を、弱者には軽蔑を。自分の上に立つ支配者が自分より弱いなどと言うことは、到底耐えられるものではありません。逆に言えば、自分より強い者が上に立つことそのものは屈辱ではないのです』
雷の貴族の頂点に立つのなら、その貴族の誰よりも強くなければならない。マキナの栄華を支える者達に不甲斐ない姿を見せてはならない。それがマキナ家の跡取りであるブランクに課せられた使命であった。
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