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『分かった。我が強くなることで、下々の貴族が快く遣えることができると言うのならそう努めよう』
『感服致します。ただ強くなりたいと願うドラゴンが大多数の中、こうして強者としての在り方を突き詰められる姿勢は御立派と言う他ありません』
『誉め言葉として素直に受け取っておく。だが……もう一つ聞いても良いだろうか』
『何でございましょう』
『強者には敬意を、弱者には軽蔑をとグルガンは先ほど言っていたな』
『ええ……』
ここまで来ればブランクが次に問い掛ける内容は容易く予想できる。グルガンは早い内に覚悟を済ませ、腹積もりを決めた。
『我は今、鍛錬の途中とは言え弱者に部類されるだろう。グルガンは弱者である我を軽蔑するのか?』
『そんなことはありません』
とにもかくにも、これは口にしておかねば話にならない。しかしそれだけでは今までの流れと辻褄が合わず、当然ブランクも納得しない。グルガンは偽りのない言葉でこう続けた。
『何故なら、私はブランク様の内面まで詳しく知っているからです。戦闘能力では推し量ることの出来ない強さを尊敬しているのです』
しかし、他の貴族はブランクの内面を伺おうとしたり評価するようなことはしない。だからこそ誰の目から見ても明らかなるもの、戦闘力で強者の名を勝ち取るしかないのだとグルガンは答えた。
先ほどと同じようにブランクはこの答えで納得してくれるとグルガンは考えていたが、グルガンなら強さについて真実を語ってくれると言う信頼を感じたブランクはそれだけに留まらなかった。
『ならば、我は弱者を軽蔑する必要などないのだな』
通常であれば根まで引き抜くが、踏み台に丁度良いからと残しておいた切り株に足を乗せ、ブランクは遠い景色を眺めた。その目線の先には、支配するべき弱者で隙を見せれば牙を剥く敵だと今まで教えられて来た他の貴族達が暮らしている。ブランクは翼を広げ、その景色を包み込むように湾曲させた。
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