謀略の発芽

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「クソッ、親子揃って雲隠れを決め込むつもりか……!」 ブランクとガルドの捕獲を立て続けに失敗したギランハーツは、踵で一度だけ大きく地団駄を踏んだ。 「まあこう言っては何ですが、ガルド・マキナはブランク・マキナと違って良心や慈悲と言うものを持ち合わせていません。仮に今さっき相対できていたとしても我々が皆殺しにされて終わりでしょう。貴方も内心安心している筈です」 「ッ……!」 例え真実でも口にされたくない言葉。ギランハーツは先程とは逆に煽るような言動を働くウェイクを睨み付けるが、当人は特に気にするような素振りを見せなかった。 「失礼次いでにハッキリ言ってしまいますと、奴等は数の優位でどうにかできる範疇を優に超えています。捕らえるには相応の計略と言うものが必要になるでしょう。だからこそ、貴方が指揮官に相応しいのです」 「そうか……そうだな。これから立て直しを図り、マキナ家を一網打尽にする。その未来に狂いはない」 ギランハーツは僅かに伏せていた顔を上げ、直視できなかったエルゼの私室のドアをもう一度見据えた。 「今に見ていろ。円満な勇退など絶対にさせない。お前が自ら龍王の座を降りるまでもなく、俺がこの手で引き摺り下ろしてやる……!」 (この流れ、本当に正しいのだろうか) 意気込むギランハーツを他所に、グルガンの内心は冷ややかであった。端から見れば、今の兄はウェイクの言葉に踊らされる道化そのもの。しかしそれをこの場で指摘しても良いことは何もない。 「一つ宜しいか」 「はい。何でしょうか」 しかしこのまま兄を妄信するだけでは自分も道化と同じである。グルガンはギランハーツが階下に向かい、それに続こうとする一瞬の合間にウェイクを捕まえて問い質した。
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