謀略の発芽

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「貴様はブランク・マキナが炎の国と癒着していることを突き止めた。それはまだ良い。しかし何故ブランク・マキナは貴様を殺し屋組織の一端だと『誤解』した?」 ギランハーツは会話の拗れであると伝えられ、それを「話術でブランクがそう誤解するように誘導した」と解釈した。しかしグルガンは内心、マキナ家の末裔であるブランクを陥れたい欲望が先行し吟味が置き去りにされていると感じていた。 「彼が何故誤解をしたか……難しいことを聞きますねえ。それは彼にしか分からないことですよ。『我はこのように考えて誤解した』、などと本人の口から説明があれば良かったのですが」 ウェイクは明らかにふざけた言い回しで答えをはぐらかしているが、グルガンは腹立たしい気持ちを今一度堪え、辛抱強く追及する。 「何か、私達に言えない手を使ったのではないか」 「例えばどのような?」 「貴様がそう名乗れば良いだけだ。これ程単純な話はない」 「ははっ。成る程、確かに私が殺し屋組織の一端だと名乗れば誤解も何もあったものじゃない」 「認めるのか」 「まさかあ」 もしそれが事実であれば、ブランクが国軍の重要人物を殺し屋呼ばわりして貶めたと言う罪は消える。ウェイクもそれを理解しており、グルガンの仮説に関心を示すが肯定はしなかった。 「彼の存在は割り切ったと聞いていましたが、未だに随分と熱を上げているようで」 「黙れ。私は誰であろうと不義理は看過しない。それだけのことだ」 「あっ……あ、アハハハハハッ……!はははははは!」 ウェイクは腹を押さえて仰け反り、天井に向かって大口を開けて笑った。 「マキナ家の眷属を長年務めておいて、元ボルトガードのアルフを通じて国軍と癒着をしておいて、そして今度はギランハーツの下に付いてマキナ家を敵に回してえ、自分のことは義理堅いと思っていらっしゃる!これは傑作だぁ!」 「・・・・・・!」 通常この言葉を浴びせられた場合、逆上するかショックを受けて自身を省みるかのどちらかである。しかし、グルガンが感じたのは底知れぬ不気味さであった。 それはウェイクの笑い方や豹変した態度がもたらしたものではない。それらが些細なものに感じるほどの、本能の根底から湧き上がる嫌悪と恐怖はグルガンに強い危機感を抱かせた。
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