呼び水

4/29
前へ
/931ページ
次へ
「そもそも、雷雲どはどのようなものかは知っているか?」 「え……ああ、確か……雨雲の中で氷の粒同士が擦れ合って静電気が起きるんだっけ、か。そんなことを授業で聞いた気がするな」 突然の問い掛けに戸惑いながらも何とか絞り出した龍希の答えにブランクが補足した。 「そうだ。雲の中にあった水分が凍り、氷の粒となる。小さく軽いものは上昇気流に持ち上げられ上空で更に成長し、大きくなれば一転重力に引かれて降下する。これらが擦れ違う際に摩擦が発生し、雲は初めて帯電する」 そして雲の下部に蓄えられたマイナスの電荷に反応し、地上にはプラスの電荷が集まる。ブランクが突然立ち上がった理由は、自分が接する地面に電荷が集まっている状況を察知したからであった。 「まあ、取り敢えず原理は分かったよ。氷の粒が静電気を起こすなら、雲の中には大量の水分がないといけない。だから雷を宿すことができるのは、必然真っ黒に濁った雨雲だけだ」 しかし、ブランクは目の前にある白い雲にそれと匹敵するような電荷が蓄えられていると説明した。即ち自然現象ではあり得ないこと、人の手が加わったものであることを示している。 「ガルドが何か細工をして、この雲の中に電気を溜めたってことか」 「端的に言えばそうだ。そしてこの雲だけではない。電荷を纏った雲は断続的に配置されている。まるで道標のようにな」 「……!」 ここで龍希はようやくブランクの言わんとすることを理解した。 「じゃあ、この特殊な雲を追って行けばガルドに会えるんだな」 「恐らく父上は、目立った真似をすることなく我と合流したいのだろう。だからこそ我にしか分からぬ方法で痕跡を残した」 「いよいよ、マキナ家一致団結って感じがしてきたな……」
/931ページ

最初のコメントを投稿しよう!

221人が本棚に入れています
本棚に追加