221人が本棚に入れています
本棚に追加
「この国に因んで言うなら、雨降って地固まる……かな。悔しいけど、貴方の言う通りだ。あの出来事がなければ、水の国は一致団結できなかった」
ガルドが主催したトーナメントの予選にて、水の国の代表を決めるブロックに再び殺し屋が送り込まれた。追い詰められた水の国の貴族はリゲルを中心に一致団結してそれを退け、リゲルは殺し屋組織のトップが当時の炎の貴族のトップであったアッシュ・グリスタであることを突き止めた。
そしてアッシュに決闘を申し込み、敗れて死んだ。
「実際のところ、奴の活躍がなければ今でも国の中枢にアッシュが居座っているところだった。これは決して嫌味ではないが、感謝している」
「……分かってるよ」
開催したのはガルドであるが、それは強制ではない。参加を決意したのは水の国の貴族達であり志は違えどリゲルもまた同じであった。そして先程の立派だと言うセリフに続くガルドの言葉にも偽りがないことはシリウスに伝わっている。
不穏な相対であったが、同行者である龍希とブランクにも免じて三人はメアーゼの屋敷に足を踏み入れることができた。
「それで、今回は何の用で此処に?」
「すっかり寂れてしまったこの屋敷に、賑やかしを添えてやろうかと思ってな」
「……」
シリウスは眉を顰め、やはり父の死に携わった男に僅かながらも理解を示したのが間違いだったかと考え始めていた。ガルドはつい普段の癖で持って回ったような言い方をしてしまったことを反省し、話を続ける。
「先ずは単刀直入に我々の頼み事から言おう。しばらく二人をこの屋敷の住まわせて欲しい」
「え……?」
声を上げたのはシリウスだったが、龍希とブランクも内心かなり驚いていた。
最初のコメントを投稿しよう!