呼び水

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「二人からこの国やお前の事情はおおよそ聞いている。先程に続いて再び結論から言えば、手を組まないかと言う誘いだ」 (……) ガルドのことを信用できるとは言い難く、此方の子細に探りまで入れているともなれば警戒せざるを得ない。龍希とブランクが口添えをしていると言う信用を込みにしてようやく中間地点と言った程度である。 しかし自分だけならともかく、この屋敷には身籠ったロゼ・マキナもいる筈であり、それを危機に陥れるだろうかとシリウスは今一度考えた。 「取り敢えず話は最後まで聞くよ」 「痛み入る」 日頃の行いから取り付く島もない、とはならなかった。さすれば一方的に状況を把握しているのはフェアではないとして、ガルドは先ず厚意に報いるべく龍希とブランクが置かれている状況をシリウスに開示した。 「僕が籠城してる間に、随分と大変なことになってるね。土の国がやたら騒がしかったのは気になってた。平民との国境線に配置してた見張りを半分以上引き戻して、あの時は気が気じゃなかったよ。あともう少しで偵察役を割り振って土の国に入るところだった」 もしそうなれば、エルゼの時間凍結魔法に巻き込まれ水の国の貴重な人員は更に減っていたことだろう。その事変を通じて、シリウスは周囲の情勢を把握できない今の状況がどれだけ恐ろしいものなのかを痛感していた。 そして土の国とは正反対に随分と静かだった炎の国の内情、そしてそれを取り巻く国軍の動乱を聞いたことでようやく最前線に追い付くことができた。 「要は匿ってくれってことだよね。国軍に追われてるから」 「本質的にはそうだが、護りに来たとも言える。月並みな言葉だが、Win-Winと言うやつだ」 「僕の方にも、Winが……?」
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