呼び水

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「ハッキリ言ってこの話、僕にとっては迷惑でしかないと思っている。君達を匿ってることが万が一にも知れたら、此処にも国軍が来るってことだろう。ただでさえ周りのことで圧迫されてるのに、これ以上負担を増やされたらたまらないよ」 シリウスの意見はごもっともであり、先程から黙っている龍希とブランクもそのことを気にしてガルドと言葉を合わせることに物怖じしていた。無論ガルドもそのことは承知しており、だからこそシリウスにも利益があると言う理論を予め口にしている。 「いや、これをWinと言ってしまうには余りにも図々しいかも知れないが……」 かと思えば、途端に自信をなくしたような口調で周囲を不安にさせた。 ガルドは今、慣れない他者を敬う話し方に苦戦しており、側から見て苛立たしい部分もある。それでも精一杯を尽くしてくれているのだろうとシリウスが辛抱していると、耳を疑うような言葉が飛び出した。 「現在御冠になっている国軍のトップ、ギランハーツ・レーガンは私だけに留まらずマキナ家そのものを憎んでいる。当て付け目的かもしれんがな。何にせよ立場も合わさって、奴の匙加減次第で罪状はどうとでもなると言うことだ」 「……!」 マキナ家、と言う言葉を聞いてシリウスはようやく忘れかけていた忌まわしき事実を思い出した。 「二人の間でどう話が付いているのかは知らんが、ロゼも世間一般ではマキナ家だ。我々が来ようと来なかろうと、近い内に国軍の手が伸びる可能性は十分に存在する」 「だから、その時力を貸すことを条件に匿って欲しいと」 「そうだ」 「君達が起こした動乱から君達が守ってくれるってことかい。ありがたい話だね、それは」 「一言もない」
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