呼び水

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度重なる新しい情報を整理するために、シリウスは一度深呼吸をした。 感情に任せてものを言えるのであれば、この話を蹴った上で「ロゼを護りたいのなら今すぐ国軍に出向いて騒ぎを収めて来い」と三人に言い付けたかった。 しかし今シリウスはそのような立場にはいない。リゲルに庇護されていた時代は終わり、今の自分はメアーゼ家を背負って立つ家主である。 (既に火蓋は切られてしまった。それならば提案通り此処に留まってもらいロゼを護らせるか。それに、話を聞く限りあの二人が国軍に大人しく投降するべきだったとは思えない。だけど元を正せばギランハーツと言う男が執念を燃やした原因は……いや、もう止そう。大人になるんだシリウス・メアーゼ。自分や自分の側にいる人が、混じり気なしの善人じゃなないと気が済まないなんて我が儘なことなんだ) マキナ家、それもガルドと言う白黒が定まらない相手を前に思考は揺れる。然れども最後は未来のことを考えた結論に達した。 「分かったよ。その提案を飲もう。部屋はいくらでもあるからね。好きに使ってもらって構わないよ」 「寛容な心に感謝する」 「もう良いよそう言うのは。背中が痒くなる。この際だから言わせてもらうけど、貴方にその喋り方は全く合ってない」 「言われずとも自覚している。しかし対等な交渉の場でこれまで通りと言う訳にも行かないだろう」 「じゃあ、そこの二人に内容だけ共有して代わりに喋ってもらうとか……」 「それは無理だ。わざわざ出張ったのに遣り甲斐がないではないか」 「……取り敢えず、部屋を案内するよ」 何はともあれ、ガルドの先を見越した危機管理とそれを逆手に取った発想で追われる身となった龍希とブランクは休み処を得ることができた。
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