呼び水

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エルゼの魔法による副作用で異端な感性を植え付けられてガルドとその妹であるプラタは産まれてきた。そしてその二人からブランクとネロと言う一対の異端がまた産まれた。 今まではそれらを核とするマキナ家の闇を巡って様々な運命が揺れ動き、多くの物語を紡ぎ出した。しかしガルドは何の気掛かりもなく自分を父親と認識し、良い恰好をしようと見栄まで張ろうとしている様を見て、実はロゼこそ一番の異端だったのではないかと考え始めていた。 「お父さん。今更と思うかもしれないけどこの際だから言わせて欲しいの。私はマキナ家を抜けたい。家を出て、シリウスと新しい世界を作って行きたい」 「ブランクが先んじたことで踏ん切りが付いたのだろう?」 「……!」 その一言にロゼと背後のブランクが僅かに緊張した。ネロを除けば唯一の男児であるブランクが龍希に娶られた以上、近親婚による純血の家系を是とする貴族としてのマキナ家は存続することができない。それはつまり、ロゼがマキナ家の跡目と言う立場に縛られる理由もまたないと言うことである。 一般的な思考で考えれば、営々と続いて来た栄えある家系を自らの意志で崩壊させる愚行を犯したブランクとそれに便乗して他所に嫁いだロゼに情状酌量の余地はない。今までは有耶無耶になっていたが、改めて自分達の立場を意識すると気後れなく家長と向き合うことは不可能である。 「案ずるな。ブランク共々好きにするが良い。確かにこの件についてはお前達を家に縛り付けるために色々と策を練ったこともあったが、今となっては野となれ山となれと言ったところだ」 「え、どうして……?」 「家から抜けると宣言しておいて、今度は家のことを心配するのか。分からんな」 ガルドは苦笑しつつ、これを皮切りに今までの経緯を掻い摘んでロゼに伝えた。
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