呼び水

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「我は、運命的な結び付きに頼り過ぎていたと言うことか」 「自覚があるのならきっとそうなんだろうね。グルガンとも、主従と言う生まれた時から決まっていた関係性が終わりを迎えた。そう考えた方が良い」 グルガンは確かに自分を愛していた。そこにマキナ家への忖度はなかったと今でもブランクは信じている。そんな唯一無二の相手を失った悲しみは胸を裂かんばかりだが、ブランクは勇気を出して運命の揺り籠から足を踏み出した。 「もしもグルガンが……いや、レーガン家がマキナ家の眷属ではなかったとしたら、最初から今のような関係だったかもしれぬな」 切っ掛けはあくまでも家同士の付き合いがあってこそ。眷属でなければレーガン家とは同じ国の貴族として頂点を争う仲であり、そこに属する相手が自分の親代わりになってくれたり、況してや愛してくれるなど有り得ないことである。 「グルガンには世話になった。その過去をなかったことにはしない。だが父上がそうであったように、グルガンも過去とは別の生き方を選んだと言うことだ」 無論、ブランクとルゴールドの結び付きがグルガンを失望させ、造反を招いてしまったことは否めない。 しかしブランクはそれを間違いだったとは思っておらず、マキナ家の規範よりも自らが新たに見出した繋がりを信じた結果だと言い切れる。ならばグルガンも今までに培った眷属としての繋がりよりも、近い内に雷の国の頂点を担うレーガン家としての繋がりを優先する権利がある。 「我はグルガンに顔向けできなくなる覚悟で、ルゴールドを仲間として迎え入れたのだ。グルガンも我に顔向けできなくなることは覚悟の上で兄に付いたのだろう。我にそれを咎めることなどできぬ」 「じゃあ、ブランクはグルガンを敵だと認めるのか?ギランハーツと同じ感情を、グルガンにも向けるのか……?」 「案ずるな、龍希。そんなことはしない」
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