呼び水

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「親子に兄弟、そして恋人……素敵な運命も沢山あると思う。だけど、あんまり拘り過ぎないことも大切よ。本当に確かな繋がりなら、最後にきっと結ばれるから」 ロゼの言葉と共に、長引いてしまった挨拶はお開きとなった。その後龍希とブランクは軽食を済ませ、先程案内された自分達が寝泊りを行う客室に戻って来た。 「この国で取れる果物、めちゃくちゃ柔らかくてフルーティーだったな」 「うむ。併せて何も飲まずとも喉の渇きまで癒せるのは優れものだ。しかし三日に一度は干し魚でも齧らねば歯茎が緩んでしまうぞ」 他愛もない会話を交わしながら、広々としたベッドに腰掛ける。マキナ家の屋敷にあるものと比べてサイズは同等だが、メアーゼはローエレメントの家系であるためかこちらには木材が多く使われており、心なしか寝心地もしなやかであった。 「そう言えば、さっきの一言はどんな意味が込められてたんだ?」 「グルガンのことか」 「ああ。確かにグルガンはグルガンの道を歩み始めたって、お前が吹っ切れてくれたのは良かったよ。落ち込まれるよりはな。だけど、そのグルガンが選んだ道は俺達と敵対するってことだろ」 「そうだ。今後何度かは、向かい合うことも覚悟せねばならなるまい」 「ブランクは……それで良いのか」 「無論恐ろしいに決まっている。先ほどは大見得を切ったが、いざグルガンに敵意を向けられれば足は竦み心身は震えるだろう。しかし、それで終わりにするつもりはない。そんな決意が今はある」 今のブランクとグルガンは生まれ持った主従関係を失った状態にある。だがそれは、二度と友好を築けないと言うことを必ずしも意味するわけではない。 「また親しくなれば良い。今度は主と眷属と言う身分差に頼ることなく、対等な立場で、純粋な友として」
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