呼び水

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「昔とは違う形でやり直す……それがお前の選んだ道か」 「マキナ家の栄華も永遠のものではなかった。例の一件がなくとも、どの道グルガンとの主従関係は終わっていたのだ。その話は本人とも少ししたがな」 無論敵対はしないに越したことはないが、それでも主従とは違う関係を築き直さなければならないことには変わりない。ブランクはそう言うが、龍希は手放しにそのプラス思考を称えることはできなかった。 「ネガティブに考えろってワケじゃないけど、やっぱりそれなりの覚悟は必要だと俺は思う」 「覚悟ならある。どんな状況でも、グルガンのことを諦めないと言う覚悟がな」 「分からない。こんな短時間の間にどんな心境の変化があったんだ」 いつの間にか、立ち直ろうとするブランクとそれに戸惑う龍希と言う構図になってしまっていた。龍希はブランクが憎悪を垂れ流した瞬間、光の翼の中に一瞬だが決定的な変化があったことを知っている。いくら淡い希望を追って気持ちを立て直したところで、残酷な現状と対面すれば再び心の闇が鎌首をもたげる気がしてならなかった。幾度とない絶望の中で、かつての自分のようにブランクが何かしらの臨界点を超えてしまうことがただ恐ろしかった。 「案ずるな。都合の良い妄想に縋っているわけではなく、我は思い出しただけに過ぎない。龍希の中にも、我よりも強くそれが刻まれている筈だ」 ブランクは指先で優しく龍希の胸の真ん中を突いた。 「何を、思い出したんだ」 「本人には気の毒だが、シリウスもかつて我々を亡き者にしようと殺し屋まで雇って襲ってきたと言うことをだ」 「……!」 「そうだ龍希。我々は、あのルゴールド・グランエルと肩を並べることができたのだ。長い時間を掛け、様々な出来事を通してな。だからグルガンとも同じことができると信じても傲慢ではあるまい」
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