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「まあ確かに言われてみれば、あのルゴールドを仲間と呼べる日が来るなんて昔の俺達に言っても絶対に信じてもらえないよな」
「そんなことはないぞ。我はともかく、龍希は信じる筈だ。以前に言っていたではないか」
ブランクはルゴールドの侵攻を退けた直後、そのルゴールドについ先ほどまで殺されかけていた筈の龍希が口にしていた言葉を振り返った。
『もう少し、話す時間が欲しかったのに……って思った』
『チェシャとか、バルトロとか、ちょっとヤバいドラゴンと出会う度に、「いくら何でもコイツとは分かり合えない」とか「今度こそ完全に敵だろう」とか考えてきた。だけど、結局そんな奴はルゴールドも含めて一人もいなかったよ。人間と龍の間にある壁なんて、お互いが思ってるほど高くないんだ』
「我はその言葉を聞いて、お前の度量に惚れ直した。だからこそ、どんな相手ともやり直せると今でも信じていられるのだ」
「そうか。だから俺の中にそれが刻まれてる筈だって、言ってくれたんだな」
ブランクの自信が追い詰められた末に発現した空想ではなく内から湧き上がったもの、それもかつて自分が示した考えに基づくものであったと知り龍希はようやく安堵することができた。
「やっぱり、特別な相手だけじゃなくて色んな人と触れ合ってやり取りするのは大事だな」
「うむ。過去の出来事、今初めて知ったこと、様々なものが絡み合い、無限に生まれる接点が瞬いて心に良い刺激を与えてくれる。戸惑いが強かったが、此処に来ることができて良かった。父上には一層感謝せねばな」
「それは嫌がられると思うけどな……」
落ち着きを取り戻し、心身を休める条件を満たした二人はこの流れに逆らうことなく布団に入って目を閉じた。
「なあ、ブランク」
「どうした」
「俺とお前は……いや、何でもない」
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