侵掠如火

4/29
前へ
/931ページ
次へ
越光を置いて部屋を出たアッシュは、血管のように入り組んだ通路を歩いてとある十字路で立ち止まった。内部構造を記憶している一握りにしか把握できないことだが、この場所は入口から来た者とすれ違わずに済む数少ないポイントである。 「やっぱりここで待ってたんだね。律儀だなあ」 「お前が適当過ぎるんだよ」 アッシュが此処で待っていることをその人物が分かっていたように、アッシュもまた此処に来るのがその人物、ライズであることを分かっていた。 「国軍に潜入中なんだろ。そんな奴がしょっちゅうアジトに来るんじゃねえよ。跡をつけられてたらどうするつもりだ」 「やだなあ。僕はそんなヘマしないよ」 「お前がヘマした副産物が今向こうの部屋で採血受けてるところだがな」 「えっ、ミイラにしちゃうの?」 「しねえよ。だから早く戻らせろって言ってんだ」 「つれないねえ。最近はここに籠ってるか向こうの世界に行ってばっかりだから、外の情報を持って来て上げたのに」 「まあ、確かに人員を『削減』してからは情報収集は疎かになってたからな。耳寄りの話があるなら聞こうじゃねえか」 「なら、羽桜龍希とブランク・マキナの話でもしようかなあ。あの二人、今大変なことになっちゃってるんだよねえ」 「あの二人、特に人間の方は追い詰められると何するか分からねえから、殺せる確証がある時以外余計なことをするなって俺が言ったのを聞いてなかったのか?」 「僕は切っ掛けを与えたまでさ。追い詰めたのは何と…………………………」 「誰だよ」 「耳寄りじゃないの?まだ全然遠いけど」 「・・・・・・」 アッシュは頬を引き攣らせ、上半身を体を捻りながら前傾させて耳をライズに近付けた。
/931ページ

最初のコメントを投稿しよう!

221人が本棚に入れています
本棚に追加