侵掠如火

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「話は戻るが、結局のところお前があの二人を追い詰めたんじゃねえか」 「まあそうと言えばそうかな。だけどあの二人を焚き付ける度に、世界で異変が起こるのが面白くてね。今回もまたそんな予感がしたんだ。君にとっても悪い話ではないでしょ?」 「確かに計画の実行はそろそろ視野に入って来る頃だ。それまでに世界が混沌と化して、各所の戦力が弱体化するに越したことはない。もう裏方で暗躍するような真似も終わりにするつもりだしな」 しかし、だからと言って好き勝手に動いても良いと言う赦しはそこに含まれてはいない……アッシュの開き掛けた口がその台詞を発する直前に、ライズの指が鼻先に押し当てられた。 曰く、まだ話には続きがあるとのことである。 「今回はそのボール(事件)が良い方向に転がってね。悪い話じゃないどころか、早速名誉挽回のチャンスが回って来たんだ」 大元を辿れば、龍希の仲間はどうやって時間を操る魔法を攻略したのかを探るようにアッシュがライズに命じたことが始まりであった。 ライズは趣味と実益を兼ねて、前から興味の対象として目を付けていた有子を攫おうとしたところ越光の妨害を受け、代わりにその越光を自分の世界に連れ込んでしまった。 越光はアッシュの好奇心を満たすことはできたが、肝心の情報収集については失敗に終わっている。 「先ずお前に名誉を気にする神経があったことに驚きだが……それで、マキナ家のイザコザとお前のしくじりがどう結び付いたってんだ」 「あのギランハーツってコ、今まで抑え込んでたフラストレーションを洗いざらいぶちまけたものだから後に引けなくなったみたいでね。屈辱を耐え凌ぐモードに切り替えるスイッチが完全に壊れちゃったみたい。かわいそ」 ライズは愉快そうに乾いた笑い声を上げた。
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