侵掠如火

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「確かにそうだな。国軍の中じゃ人間の世界に関することは相当優先度が低い上に、俺は国軍に害を与えたから追放されたわけじゃない。ノーマークの可能性も捨てるには早いかもしれねえ」 「そうではない。仮にマークされていたとしてもだ。何故国軍に目を付けられたら交戦すると言う前提で話が進んでいる?逃げるなり隠れるなり、すれば良いではないか」 「……ああ」 バニアスは大きくパチパチと瞬きをして、我に返ったかのように耳の後ろを掻いた。 「確かにそうだな。今までは追う側と言うか、国軍側だったもんでついその前提で話を進めちまった」 「まあ、争わなくて良いならそれが一番でしょうね」 「よもやお前からそんな言葉が聞けるとはな。先走った俺が血気盛んみたいじゃねえかよ」 「茶化さないで下さい。勿論叩きのめして追い返すのが一番手っ取り早くて確実ですが、私とてこれ以上罪を重ねる訳にはいきませんからね。此処に踏み込まれたとして、貴方が追い返してくれるか匿ってくれるかして頂けるならそれに越したことはありません」 「言われてみれば、お前さえそのつもりなら今も追手が残ってるってこと自体が在り得ないことだからな……」 バニアスが納得した通り、ルゴールドが手段を選ばなければ国軍はギランハーツ諸共皆殺しにされている。現状における最高戦力が敵味方含めてもルゴールドであることから交戦を最善手としたが、そうでないことが分かるとバニアスは直ぐに新たな策を打って出た。 「流石に追い返すとなったら穏便には済まなくなりそうだが、それなら隠れりゃ良い。この家には実際にドラゴンが三人も住んでるんだ。魔力の気配がしたって全く不思議じゃねえ。正に木を隠すなら森の中ってな」
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