Underworld

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有子は変わらずに口を噤み続け、ライズもまたマイペースに話を続ける。 「その情報って言うのがね、魔法に関することなんだ。本来龍王だけが扱うことのできる時間を操る魔法、それを羽桜龍希は手に入れた」 (……) 無論、その情報に心辺りはある。エレボスの手でブランクを葬られた龍希が暴走の末に開花させた能力であり、それを振り翳してこの世界の全てを支配しようとした。ルゴールドに導かれ、その龍希と繰り広げた決闘は今も有子の記憶に深く刻まれている。 「僕の友達が正しければ、正しく絶対無敵の力を手に入れた羽桜龍希を止めたのは君達だ。ルゴールド・グランエルがいたとは言え、あの魔法だけは特別だ。単純な戦闘力でどうにかできるものじゃない。何かあったんでしょ?弱点とか、裏ワザが」 つまり、ライズが欲している情報は有子の記憶そのもの。龍希の使う時間の魔法をどうやって打ち崩し、敗北を認めさせたのか。その攻略の糸口を探っているのだと読み取れた。 「悪いヤツだよねえ。それを知ったら今度はいよいよ、龍王にケンカ売るつもりかもしれない。絶対にロクな使い方はしないよ。あ、これオフレコだからね。僕がこんなこと言ってたのバレたら怒られちゃうから」 得意げに耳打ちされずとも、そんなことは百も承知である。しかしわざとらしくそれを明言すると言うことは、その友人とやらの本懐を遂げることなどライズにとってはどうでも良いと言うことである。 「だからさあ、君は絶対に時間の魔法に関する秘密を『喋っちゃダメだよ』。そんなことされたら、僕は友達にそれを伝えないといけない。そうしたら次こそこの世界はオシマイかも。君の居た人間の世界だって危ないかもねえ」 これもまた同じく、言われるまでもないこと。しかし有子はライズがこれ見よがしに釘を刺してきた意味を理解した。 ライズの目的は依頼通り情報を手に入れることではなく有子を弄ぶこと。つまり有子が黙秘を続けることは、ライズにとってこの上なく有難いのである。
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