Underworld

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「そう言うワケだから、君はこれからもお人形さんみたいに口を閉じていてくれると助かるよ」 その暴言が示す通り、有子が秘密を喋らなければライズに弄ばれ続けることになる。かと言って口を割れば極悪人が得てはならない情報がその手に渡る。しかしこの悪趣味な二者択一は字面ほど単純なものではない。二者択一であることそのものが有子を嬲る罠である。 そもそも、有子が口を割ったところでライズがその情報を依頼元に伝えるとは限らない。尋問の大義名分で存分に痛め付け、耐えきれず情報を吐き出したところに更なる追い打ちを掛けて絶望させたいと言う欲望が透けて見えた。だがそれが読み取れたところで有子に反抗する手段はない。 「へー、負けず嫌いみたいだけどここで口を開くほど幼稚じゃないんだ。また一つ君に詳しくなっちゃったよ!」 自分一人に打破できない状況ならば、耐え忍んで助けを待つ以外にない。そのためにも、ここで用済みとなる可能性を少しでも減らすべくやはり口は閉じておくべきである。そう決意を固める有子に、ライズは出し物を披露した。 「どこまで君のことを知れば、『彼』に追い付けるかなあ」 「・・・・・・!」 ライズが自身の顔に押し当てた手の平から、白濁した粘度の高い液体が滴り落ちた。その正体は魔法によって生み出された樹脂であり、ライズがとあることをするための必需品である。 「観察するチャンスがあったから真似てみたけど、結構良くできてるんじゃないかな?」 樹脂を捏ねて弾力を出し、肌にコーティングしながら徐々に形を整え着色を行う。さながらゴムマスクのように樹脂で顔が覆い尽くされた時、有子の目の前には今一番会いたいと願う幻があった。
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