Underworld

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「ああ、一応誤解のないように伝えておくとね。僕は別に誰かを痛め付けたり苦しめたりするのが好きなわけではないよ。極限まで追い詰められた生物が見せてくれる最後の輝き、それが面白くて好きなだけなんだ」 それも、文明を持つ知的生物なら格別。ただ怒り狂って暴れるだけに限らず、命乞いをする者、どうしてこんなことをするんだと悲しむ者、何かと理屈を付けて自分は負けていないのだと喚く者と十人十色である。 醜い欲望や裏の事情に塗れた世界に身を置くことができ、積極的に生命の最期と関わることのできる殺し屋と言う仕事は自分の天職だとライズは自負している。しかし、龍の世界でただ殺し屋を営むだけでは決して出会うことのない存在をライズは知ってしまった。 「君は……君と言う人間はどんな輝きを見せてくれるんだい?」 それは人間。羽桜龍希は、たった一人の恋人を取り戻すために龍王の力を我が物とし、この世界で歯向かえる者はいないとされた神にさえ立ち向かって見せた。 自分の世界に存在しない生物である人間は、肉体的、あるいは精神的に追い詰められた時、未知なる力を発揮する。そんな恰好の玩具にライズが目を付けない筈はなかった。 「ガァッ!」 「ははっ。小手調べは僕がやる側だよ」 魔法で腕に水を纏わせ、鋭い爪を有した装甲に作り替えたものをライズに振り下ろすが、単純な動作による攻撃では到底捉えることはできない。軽く身を引いて躱し、足元にある装甲をそのまま踏み付けた。 「硬度は中々だね。成る程、『手』は君にとって大事な部位ってワケだ」 余裕を見せ付け、もっと本気にならなければ自分は倒せないとアピールする。その後のことなど知ったことではない。極限の果てにある人間の可能性を目の前で拝みたいがために、ライズは有子を徹底的に嬲る算段であった。
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