Underworld

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時は遡り、有子の惨状が確約された未来を控えたエルト達は悲壮な面々であった。特にルゴールドは最も有子を護れる可能性を持ちながら取り逃がしてしまった罪悪感からエルトに掛ける言葉が見付からなかった。 「悲しんでいる時間はありません。早く追い掛けましょう」 「え、ええ……」 意外にも放心状態と思われたエルトに先んじて話し掛けられ、ルゴールドは戸惑いながらも楠木を連れて塹壕の外に出た。そこで待ち構えていた、未だに何が起こったのか理解できていないバニアス、レピンス、ネスレの三人にルゴールドは有子が中で待ち伏せていたライズに有子が攫われたことを説明した。 「そんな、バカな話があるかよ……!」 エルトに気を遣って声は荒らげないが、それでもバニアスは唸るようなトーンで理不尽を嘆きながら天井を仰ぐ。かつては想いの相手を守り抜くために作り上げた塹壕を仲間のために活かす時が来たと意気込んだ矢先、その中に宿敵が待ち構えていたなど悪夢以外の何でもない。 当然最初に湧き上がるのはやり場のない怒りや悲しみだが、エルトがそれを押し殺して目の前に立っている以上、バニアスも長々とそれに支配されるわけにはいかなかった。次に思考の矛先が向いたのは、そもそも何故このようなことが起こってしまったのかと言うことである。 「繰り返しになっちまうが、今の状況は本当に馬鹿げてやがる。いや、そんな言葉じゃ済まされない状況だ。よりによって、何であの中で敵が待ち伏せできたんだ。侵入した方法も分からねえし、そもそもどうやって塹壕のことを知ったんだ……!?」 この謎が解けなければ、もはやこの家の中も安全とは言い難い。そして現状に追い打ちを掛けるかのように、玄関の方から大きな音が鳴り響いた。
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