Underworld

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「不幸中の幸いですかね」 「国軍だろ。泣きっ面に蜂じゃねえのかよ」 横に付いている呼び鈴を無視して乱暴に戸を叩くのは、人間の世界に疎いドラゴンがやりがちな行動であり、今家の中に響いている音はそれと合致している。それを踏まえて次の進展を考えているルゴールドと、安息の地を踏みにじられた動揺から立ち直っておらず面倒ごとが増えたと嘆くバニアスは対照的であった。 「もう起こってしまったものは仕方がありません。省みるのはもう少し後にすしましょう。今は、空鍔有子と先に連れ去られたもう一人の救出が最優先です」 「……そうか。もう使えるものは何でも使うしかねえんだな」 バニアスは観念して音の方向に目をやった。エルトの察知と理解も早い。 「そうですね。私達は、自力で世界を移動することができません。国軍の目的は不明ですが、協力するにせよ利用するにせよ彼等の手は借りなければならない」 そして、その協力を仰ぐ役割に最も適しているのはエルトである。あまり時間を掛けて踏み込まれても具合が悪い。そう言い残して直ぐ様玄関の方へと向かった。 「バニアス。貴方も彼に続いて下さい。ネスレ貴女もです」 「お前達はどうするんだ。結局、身は隠すのか」 「こうなるとは思っていなかったので、私は国軍と対立する姿勢を取ってしまいました。真っ先に出て行くとことが拗れでしょう。ただ、その必要があるなら降伏もしますよ。そうするか否かは事の成り行き、そして貴方達の下した判断に従います」 「お前、そこまで……分かったよ。悪いようにはしねえ。元国軍の肩書き、使い潰して来るぜ。前科で塗り潰されていなきゃ良いがな」 エルト、バニアス、ネスレの三人が玄関に向かい、ルゴールドと楠木、そしてレピンスが奥の部屋に残った。 「さて、上手く場は整えてあげましたよ。もう押し問答をやっている時間はありません。さっさと白状をしてもらいましょう」 「・・・・・・!」 バニアス達が去ったのを確認すると、ルゴールドはレピンスに詰め寄った。
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