Underworld

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「別に自慢にはなりませんが、私はこれまで様々な変化を受け入れてきました。立場もその時によって大きく異なります。その中で、私はアッシュ・グリスタと言う男とも関わりを持ってきました。貴女は言うまでもなくご存じでしょうがね」 「……」 レピンスはアッシュの下で働いていた際にもルゴールドと顔を合わせたことがあり、その言葉は否定できない。しかし、全てを受け入れることもできなかった。 「確かに私はあの男に従事していた。あの人間の女を攫ったライズも同じ立場……だが、根本は違う。私は自由を得ると言う目的のために、あくまで一時的に仕えていたに過ぎない」 「ええ、知っていますよ。全てはバニアスのためでしょう」 龍の世界を追放されたバニアスと再会すること。それがレピンスにとっての悲願であった。そしてルゴールドはバニアスが追放される原因を作ってしまった負い目から、これまでレピンスには同情的であり極力責めるような言動は取ってこなかった。 しかし、今回ばかりは見逃すわけにはいと言う意志が徐々に強まる語気に現れている。 「貴女がアッシュ・グリスタの下どんなことをしていたのか知りませんが、私はそれを咎めるような立場ではありません。その成果として、貴女は自由を勝ち取り此処にいる。それはまあ良いでしょう。しかし」 ルゴールドは非礼を承知で指を立て、その先をレピンスの目に確りと向けた。 「その目はどうやって手に入れましたか?貴女は殺し屋の一族に生まれ、その目には狙撃手の使命を全うするための魔法陣が刻まれていた筈です」 その魔法陣は生物を超越した望遠をレピンスに授け、代償として近傍の視野を全て奪った。補助なしでは日常生活もままならず、バニアスとの再会が叶ってもその顔を見ることすらできない。 そんな運命を背負っていたレピンスが、何食わぬ顔でバニアスと共に不自由のない生活を送っているのはどう訳なのかと、ルゴールドは改めて問い掛けた。
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